ボルダリングチョークの選び方|肌タイプ別おすすめ&厳選比較
「レンタルチョークだとなんだか心許ない」
「あと一手でゴールだったのに、手汗でぬめって落ちてしまった」
「種類が多すぎて、どれを選べばいいか分からない」
こんな悔しい経験をしていませんか?
実は、チョーク選びはシューズ選びと同じくらい重要です。自分の手肌タイプ(手汗か乾燥肌か)に合わないものを使うと、逆に滑りやすくなり「実力はあるのに登れない」という非常にもったいない状況に陥ってしまいます。
そこで本記事では、国内外の主要20製品を徹底リサーチした筆者が、タイプ別に「本当に止まる最強のチョーク」を厳選して解説します。
結論から言うと、迷ったら圧倒的な支持率を誇る「東京粉末 BLACK PACK」か、下地としても優秀な「GRASP リキッドチョーク」を選べば間違いありません。
この記事を参考に最適な「魔法の粉」を見つけ、自身の限界グレードを更新しましょう。
ボルダリングチョークの基礎知識と役割

レンタル品からマイチョークへの切り替えを検討する際、まずはチョークが果たす本当の機能を知ることが大切です。
ここでは、クライミングにおけるチョークの役割と種類について、以下の3点から解説します。
摩擦を生む本来のメカニズム
形状ごとのメリットとデメリット
成分が登りに与える科学的な影響
正しい知識を身につけることで、雰囲気だけでなく論理的に自分に合った製品を選べるようになります。
滑り止めではなく水分除去という本来の役割

ボルダリングで使用するチョークの最大の役割は、ホールド(壁の突起)への摩擦力を直接生むことではなく、手汗という「水分を除去すること」です。多くの初心者が強力な滑り止めと誤解しがちですが、実際には手の表面をドライに保つための吸水剤として機能します。
指先とホールドの間に汗の膜ができると、それが潤滑油となり滑落の原因になりかねません。チョークの主成分である炭酸マグネシウムは、目に見えない微細な穴を持つ多孔質構造をしており、この穴が水分を強力に吸着します。汗を取り除くことで、本来の指皮が持つ摩擦力を回復させるメカニズムと言えるでしょう。
実は、完全に乾燥した手に多量のチョークをつけると、逆に滑りやすくなるという科学的なパラドックスも報告されています。粉末の粒子がベアリングのように転がり、摩擦係数を下げてしまうためです。乾燥肌のクライマーが「粉をつけるとホールドを弾く」と感じるのには、こうした明確な理由がありました。
自身のコンディションに対して過剰な塗布は避け、適切な水分コントロールを意識してください。単なる粘着力への期待ではなく、「自分の手汗量に見合った吸水性能」を基準に選ぶことが、完登への近道になります。
液体や粉末など形状による特徴とメリット

チョークの形状は大きく分けて「液体(リキッド)」「粉末(パウダー)」「固形(ブロック)」の3種類が存在し、それぞれ得意とする役割が異なります。
最も大きな違いは、手に付着させるプロセスと持続性です。液体タイプは、炭酸マグネシウムをアルコールに溶かしたもので、塗布後にアルコールが揮発する気化熱を利用して手の水分を一気に飛ばします。指のシワの奥まで成分が入り込むため、チョークの下地(ベースレイヤー)として非常に優秀な定着力を発揮します。
一方で粉末タイプは、即効性と調整のしやすさが最大の強みと言えます。登っている最中に手汗をかいても、チョークバッグの中で手を揉み込むだけですぐに吸湿効果を取り戻せるからです。粉末の中にも、飛散を防ぐために布袋に入れた「チョークボール」や、好みの大きさに砕いて使う「ブロック」があり、ジムのルールや好みに応じて使い分ける必要があります。
初心者のうちは、周囲を汚さず手軽に使える液体タイプから始め、課題の難易度が上がってきたら粉末タイプを併用するのが理想的でしょう。まずはそれぞれの特性を理解し、自分の登る環境に合わせた形状を選ぶことが、安定した登りへの第一歩となります。
炭酸マグネシウムやロジンなど成分の科学

チョークの性能差を生み出す決定的な要素は、主成分である「炭酸マグネシウム」の品質と、摩擦を補助する「添加物」の配合バランスにあります。白い粉の正体を知ることで、感覚だけでなく論理的に自分に合う製品を選び抜くことが可能です。
まず、チョークのベースとなる炭酸マグネシウムは、手汗を吸収して皮膚をドライに保つ役割を担っています。特に「Upsalite(アップサライト)」と呼ばれる特殊な多孔質構造を持つマグネシウムは、表面積が非常に広く、通常の数倍の吸湿速度を誇ります。安価な体操用ブロックと比較してクライミング専用品が高価なのは、こうした純度や粒子の細かさを調整し、指紋の溝まで入り込むよう設計されているためです。
次に重要なのが、強力なグリップ力を生む添加物「ロジン(松ヤニ)」の存在です。ロジンは植物由来の樹脂であり、独特の粘り気で物理的な摩擦係数を向上させますが、同時にアレルギーの原因物質となるリスクも含んでいます。また、岩場で使用すると岩の表面を磨いてツルツルにしてしまう懸念があるため、近年では「ロジンフリー」の製品や、卵殻やカキ殻といった天然由来成分で代替する環境配慮型も増えてきました。
液体チョークに含まれるアルコール成分についても理解が必要です。アルコールは水分を揮発させ即座に乾かす利便性がありますが、高濃度のものは皮膚の油分まで奪い、手荒れを引き起こす要因となります。肌が弱い方は、保湿成分が添加されたものや、ノンアルコールタイプを検討すると良いでしょう。成分表を確認し、吸湿が必要なのか、粘り気が必要なのかを見極めることが、脱ビギナーへの第一歩です。
自分に合うボルダリングチョークの選び方5選

チョークの成分や形状に関する知識を深めたところで、次は「自分にとっての最適解」を見つけるための具体的な選定基準を見ていきましょう。どんなに高性能な製品であっても、自分の手のコンディションや登る環境に合致していなければ、その効果を十分に発揮できません。
ここでは、自分に合うチョークを確実に選び抜くための5つのポイントを解説します。
自分の手肌タイプ(多汗症か乾燥肌か)
利用するジムのルールや環境
好みのグリップ感と質感
手荒れリスクとメンテナンス性
持続力を考慮した実質的なコストパフォーマンス
これらを順に確認することで、数ある選択肢の中から失敗のない一本を見つけ出せるはずです。
多汗症か乾燥肌かを見極める手肌タイプ診断

最適なチョークを選ぶための第一歩は、自分の手が「多汗タイプ」なのか「乾燥タイプ」なのかを正確に把握することです。実は、チョークは本来「手汗(水分)を除去するもの」であり、乾燥した手に大量につけると粒子が潤滑剤となり、逆に滑りやすくなる現象が起こります。自分に適した製品を選ぶために、まずは以下の基準で手肌の状態をセルフチェックしてみましょう。
多汗タイプ、いわゆる「ヌメリ手」の傾向がある方は、トライ後にホールドが湿っていたり、黒いホールドを触った跡がくっきりと濡れて残ったりします。特に緊張した場面で指先からじわりと汗が吹き出る感覚があるなら、吸湿性能に特化したチョークが必要です。このタイプは、炭酸マグネシウムの純度が高く、乾燥剤が配合されたパウダーや、アルコールベースの液体チョークを選ぶことで、最大のパフォーマンスを発揮できるでしょう。
一方で乾燥タイプ、通称「カサカサ手」の方は、冬場を中心に指先がホールドに吸い付かず、プラスチックのように弾かれる感覚を覚えることが多いはずです。手を洗った直後につっぱり感がある場合もこのタイプに該当し、過度な乾燥剤入りチョークを使うと摩擦係数が低下してしまいます。水分量を適度に保つために、ロジン(松脂)を含んだしっとり系の製品や、水分調整機能を持つ下地用リキッドを活用するのが正解です。
季節や体調によっても手肌のコンディションは変化するため、常に同じチョークが最適解とは限りません。夏場は吸湿性の高いものを、冬場は保湿性のあるものを使い分けるなど、その日の手の状態に合わせてギアを選択する視点を持つことが、4級の壁を突破する鍵となります。まずは自分がどちらの傾向が強いかを知り、逆効果にならない選択を心がけてください。
利用シーンとジムのルールへの対応

チョーク選びで最も優先すべき絶対的な基準は、自身が通うクライミングジムの利用規約です。どれほど高性能なチョークであっても、施設側で使用が禁止されていれば元も子もありません。近年は、店内の空気質(PM10濃度)の維持や空調フィルターの目詰まりを防ぐため、粉末状のチョーク(パウダーチョーク)の使用を制限する店舗が増加傾向にあります。
多くのジムで採用されているのが、「粉末チョークの直接使用禁止」というルールです。この場合、粉末チョークを目の細かい布袋に入れた「チョークボール」を使用するか、そもそも粉が舞わない「液体チョーク」を選択しなければなりません。チョークボールとは、袋を握ることで適量の粉が染み出す仕組みのアイテムで、過剰な飛散を防ぐ効果が期待できます。
さらに厳格な基準として、「完全液体チョーク限定」としているジムも少なくありません。ここでは粉末タイプの持ち込み自体がマナー違反となるため、速乾性の高いリキッドタイプを一本持っておくと安心でしょう。遠征などで初めて訪れるジムへ行く際は、事前にウェブサイトでルールを確認するか、電話で問い合わせるのが確実な方法です。
自宅でのトレーニングや、衣服への汚れを極端に嫌うシーンでも選び方は変わります。粉が舞うと部屋や黒いウェアが白く汚れてしまうため、そうした環境では汚れにくい液体タイプや、飛散しにくいブロックタイプ(固形)が重宝するはずです。自分の登る場所がどのような環境なのかを把握し、ルールと清潔さに配慮した製品を選ぶことが、スマートなクライマーへの第一歩と言えます。
グリップ力の質と好みの質感の見極め

自分に合うチョークを見つけるには、単に「滑らない」だけでなく、グリップの「質」そのものを見極める視点が必要です。大きく分けて、乾燥させて物理的な摩擦を生む「サラサラ・キシキシ系」と、適度な湿度を持たせて張り付く「しっとり・ペタペタ系」の2パターンが存在するからです。
スローパーと呼ばれる丸いホールドを手のひら全体で抑え込む場面では、ザラつきで摩擦を高める「キシキシ感」が有利に働くでしょう。瀬戸内マグネシオのようなカキ殻(廃棄物を再利用した炭酸カルシウム)や、GRASPの卵殻配合モデルは、粒子が粗く独特な引っかかりを提供してくれるのが特徴です。
一方で、指先だけで極小の突起を捉えるカチ課題では、指の皮がズレないよう固定する「粘り気」が求められます。東京粉末のBLACK PACKのようにロジン(松ヤニ)を含んだり、水分量を調整した高粘度タイプを使用すれば、吸い付くような安心感を得ることが可能です。
粉の粒子の粗さも、好みが分かれる重要なポイントと言えます。片栗粉のように細かいパウダーは指紋の溝まで入り込みますが、手汗が多い人はすぐに汗と混ざり、泥状になるリスクも否定できません。
FrictionLabsのGorilla Gripのように塊(チャンク)が混ざったタイプなら、登る直前に指で潰すことで、常に新鮮な粉を指先に定着させると良いでしょう。
最終的には、自分の肌感覚で「最も力が入る」と感じる質感を選ぶことが、グレード更新への近道です。まずはジムのショップでサンプルを触らせてもらい、実際の課題でフィーリングを確認してみてください。
手荒れリスクやウェアの洗濯しやすさ

長くボルダリングを続けるためには、グリップ力と同じくらい「肌への負担」と「メンテナンス性」を考慮する必要があります。強力な制動力を誇るチョークには、副作用として手荒れやウェアの汚れを招く成分が含まれている場合が多いからです。
特に液体チョークの多くは、速乾性を高めるために高濃度のアルコールを含んでいます。これは手汗を飛ばすのに有効ですが、同時に皮膚に必要な油分まで奪い、指のひび割れやあかぎれの原因になりかねません。肌が弱い方や冬場の乾燥が気になる時期は、ノンアルコールタイプや、ヒアルロン酸などの保湿成分が配合された製品を選ぶと良いでしょう。
また、松ヤニから作られる「ロジン」という成分にも注意が必要です。ロジンは強力な粘り気を生み出しますが、繊維の奥に入り込むとなかなか落ちない性質を持っています。お気に入りの黒いクライミングパンツが洗濯しても白く汚れたままになるのは、この成分が影響しているケースが少なくありません。
洗濯の手間を減らしたい方や、仕事帰りにジムへ行きウェアを清潔に持ち帰りたい方は、「ロジンフリー」と記載された製品や、水で簡単に洗い流せると謳うチョークが適しています。登る頻度が高い人ほど、体と道具へのダメージが少ない製品を選ぶことが、快適なクライミングライフを送る秘訣と言えます。
1回の持続力で判断する本当のコスパ

チョークの費用対効果は、単純なグラム単価ではなく「一度の塗布でどれだけ登り続けられるか」という持続力で判断すべきです。一見すると安価な大容量パックはお得に感じられますが、グリップ力が弱く数手で落ちてしまうようでは、頻繁な付け直しが必要となり消費スピードが早まります。
高純度なマグネシウムを使用した高品質なチョークは、粒子が細かく指紋の奥まで定着するため、少量でも長いルートの最後まで効果を発揮します。1回のトライに必要な量が少なくて済むのであれば、初期費用が多少高くても、1ヶ月単位で見ればランニングコストは抑えられるでしょう。
何度も手をチョークバッグに入れる動作は、登るリズムを乱し、完登に向けた集中力を削ぐ原因にもなりかねません。パッケージの価格に惑わされず、1回のパフォーマンスを最大化できる「持ちの良さ」を基準に選ぶことが、結果的に最も賢い選択となります。
初心者におすすめのボルダリングチョークTOP5【総合ランキング】

選び方の基準を踏まえ、ここからは初心者から中級者へのステップアップに最適な、総合力の高いチョークを厳選して紹介します。
多くのクライマーに支持されるこれらの製品には、共通して以下の特徴があります。
どんなコンディションでも安定した性能を発揮する
入手しやすく継続して使い続けられる
利用者の評価が高く信頼性が確立されている
まずは、これら「間違いのない」定番モデルから、自分に合うパートナーを見つけましょう。
【東京粉末】BLACK PACK|高粘度で湿気を制御する定番品

国内クライミングシーンを牽引する東京粉末(TOKYO POWDER)の中でも、圧倒的な支持率を誇るベストセラー製品です。最大の魅力は、微細な粒子による非常に高いフリクション性能と、独自の加工による「粘り気」のある手触りにあります。
この粘り気が指先の水分量を適切にコントロールし、乾燥しがちな冬場でもホールドに吸い付くような感覚を得られるでしょう。多くのトップクライマーが本気で完登を狙う際の「勝負チョーク」として愛用しています。
少し値は張りますが、ここぞというトライで確実なグリップ力を発揮するため、グレード更新を目指す方には自信を持っておすすめできる一品と言えます。
【GRASP】レギュラータイプ|日本の気候に合わせたバランス型

世界的トップクライマーである小山田大氏の協力のもと開発された、国産ブランドGRASP(グラスプ)のスタンダードモデルです。日本の高温多湿な気候を考慮して成分配合が調整されており、季節を問わず安定したパフォーマンスを発揮します。
性能に対して価格が抑えられており、日々のトレーニングで惜しみなく使えるコストパフォーマンスの良さが大きな利点です。「高い性能は欲しいけれど、ランニングコストも気になる」という論理的なクライマーにとって、最適解となるでしょう。
さらっとした感触で癖がなく、他のチョークと混ぜる際のベースとしても優秀なため、長く付き合える基本のチョークです。
【PD9】PD9 クライミング液体チョーク|汚れず下地にも使える万能型

衣服や周囲を汚したくないクライマーにとって、PD9は革命的な液体チョークと言えます。最大の特徴は、塗布しても手が真っ白にならず、乾燥すると透明に近い被膜へ変化する点です。
一般的な製品に含まれる炭酸マグネシウムや松ヤニ(ロジン)を使用せず、独自の成分配合で強力なグリップ力を確保しているため、粉が舞い散る心配がありません。周囲への配慮が必要な混雑したジムや、自宅でのトレーニングボードで使用する際にも最適でしょう。
仕事帰りにジムへ立ち寄る場合でも、スーツやバッグに粉が付着するリスクを避けられます。清潔感を重視する方や、チョーク特有の粉っぽさが苦手な手汗多めの方に打ってつけのモデル。
実は単体使用だけでなく、粉チョークの下地(ベースレイヤー)としても極めて優秀な性能を発揮します。PD9を塗って乾かした上から粉をつけると、驚くほど定着が良くなり、手汗によるぬめりを長時間抑え込むのに役立つためです。
【Black Diamond】ホワイトゴールド|コスパに優れた世界標準モデル

世界中のジムや岩場で目にする、まさにチョークのスタンダードと言える存在です。癖のない使用感と高い吸湿性を持っており、初心者からプロまで幅広い層に支持されています。価格も手頃で、日々の練習でランニングコストを気にせずたっぷりと使える点が大きな魅力と言えます。
販売形態には、最初から粉状になっている「ルーズチョーク」と、固形の「ブロック」の2種類があります。ブロックタイプは自分の好みの大きさに崩して使えるため、指先への定着感を調整したい愛好者が多いのも特徴でしょう。どちらも成分はシンプルで余計な添加物が少なく、ホールドの手触りを素直に感じ取れるのがメリットです。
初めてマイチョークを購入する際、何を選べば良いか分からないという方には、この製品が最適解となります。これを基準にすることで、将来的に「もっと滑り止め効果が欲しい」「よりサラサラした質感が良い」といった自分の好みを測る物差しになるからです。まずはこの世界標準モデルで、チョークを使う感覚を養ってみてください。
【FrictionLabs】Gorilla Grip|高純度マグネシウムの強力グリップ

FrictionLabs(フリクションラボ)は、科学的なアプローチで最高品質を追求するアメリカ・コロラド州発のチョークブランドです。中でも「Gorilla Grip(ゴリラグリップ)」は、その名の通り野性的な保持力を生み出す製品として、世界中のトップクライマーから絶大な信頼を得ています。価格は一般的な製品よりも高めですが、一度使うと他のものには戻れないという愛用者が後を絶ちません。
最大の特徴は、粉末の中に適度な大きさの塊が混ざっている「チャンキータイプ」と呼ばれる形状であることです。登る直前に指先でこの塊を押し潰すことで、新鮮かつ微細なパウダーが発生し、指紋の溝の隅々まで隙間なく入り込みます。自分で定着感をコントロールできるため、ここ一番のトライで精神的な安定感をもたらしてくれるでしょう。
不純物を極限まで排除した高純度マグネシウムを使用しており、一度つけるだけで効果が長く続く点も見逃せません。何度もチョークバッグに手を入れる必要がなくなるため、結果として一回の使用量が減り、長期的に見ればコストパフォーマンスにも優れています。グレード更新の壁を感じているなら、まずはこの「魔法の粉」を試してみてください。
手汗やヌメリ手を防ぐ強力吸湿モデルおすすめ5選

総合力の高い定番モデルを押さえたところで、次はより深刻な悩みに特化した製品を見ていきましょう。多くのクライマーが直面する「手汗」や「ホールドのぬめり」は、完登を阻む大きな壁となります。
ここでは、過酷なコンディションでもグリップ力を維持するために開発された、吸湿性能の高いモデルを厳選しました。
- 湿気を強力にコントロールする成分配合
- 汗をかいても持続するドライ感
- 日本の高温多湿な気候への適応力
標準的なチョークでは太刀打ちできない「ぬめり」に苦戦しているなら、解決策はここにあります。それぞれの特徴を比較し、自分の手肌を助けてくれる強力な武器を見つけてください。
【東京粉末】PURE PACK(ピュアパック)|多汗や高湿度に強いサラサラ感
混ぜ物なしの100%炭酸マグネシウムで作られた、圧倒的なサラサラ感が特徴の製品です。余計な添加物を含まない高純度な粉末が水分を素早く吸収し、瞬時に手の表面をドライな状態へと導きます。
手汗をかきやすい体質の人や、梅雨時期の湿気がこもったジム内でも、不快なベタつきを感じさせません。指先が常に乾いている感覚を維持できるため、スローパーなどの摩擦力が求められるホールドでも安心して力を込められます。
また、癖のない使用感からブレンドのベースとしても非常に優秀です。他の粘り気のあるチョークと混ぜて自分好みの質感を作る際にも、このピュアパックが最適解となるでしょう。
【GRASP】ハイグリップ ウェットコンディション|夏のぬめり手専用の卵殻配合
日本の高温多湿な夏や、激しい手汗に悩むクライマーのために特化して開発されたモデルです。成分の一部に洗浄・熱処理した卵殻(卵の殻)を配合しており、その多孔質構造が汗を強力に吸着します。
登っている最中に手汗が滲んできても、グリップ力が落ちにくい独特の粘り強さを持っています。ぬめりでホールドを弾いてしまう悔しい経験をしたことがあるなら、この吸着力は大きな助けとなるはずです。
まさに「ウェットコンディション」の名に恥じない性能を発揮し、夏場の過酷な環境下でも安定した登りをサポートします。手汗対策で迷走している方は、一度試してみる価値があります。
【Black Diamond】ブラックゴールド|吸湿性を高めたハイエンドモデル
手汗が多くてホールドが滑るという深刻な悩みを持つ方には、Black Diamondが誇るこのハイエンドモデルが強力な武器となります。同社の定番である「ホワイトゴールド」をベースにしつつ、吸湿性能を科学的に向上させた製品だからです。
最大の特徴は、「Upsalite(アップサライト)」と呼ばれる特殊な多孔質炭酸マグネシウムが10%配合されている点でしょう。アップサライトは微細な穴が無数に開いた構造をしており、通常の炭酸マグネシウムと比較して圧倒的に広い表面積を持っています。この構造がスポンジのように瞬時に水分を吸い上げるため、じっとりとした汗をかくタイプの人でも、指先をドライな状態に長時間保ちます。
日本の高温多湿な夏場のジムや、熱気でホールドがぬめりやすいコンディションでこそ真価を発揮するチョークと言えます。価格はスタンダードモデルより少し上がりますが、ここ一番のトライで滑りを防ぎたいなら、投資する価値は十分にあるはずです。絶対に落ちられない課題に挑む際は、この黒いパッケージを選んでみてください。
【Metolius】スーパーチョーク|独自乾燥剤で手汗を止めるロングセラー

メトリウス(Metolius)のスーパーチョークは、深刻な手汗でホールドが滑ることに悩むクライマーにとって、救世主とも呼べる粉末チョークです。最大の特徴は、一般的な炭酸マグネシウムに加え、ブランド独自配合の強力な乾燥剤が含まれている点にあると言えます。
この成分が指先から出る水分を根こそぎ吸収するため、真夏の高温多湿なジムや、緊張で汗が止まらない場面でも驚異的なフリクション(摩擦)を維持してくれます。長年「最強の滑り止め」として愛され続けているのには、他にはない明確な理由があるからでしょう。
一方で吸湿力が極めて高いため、元々手が乾燥しやすい方が使用すると、指の皮が荒れてひび割れを起こすリスクも否定できません。使用後は手洗いを徹底し、ハンドクリーム等で保湿ケアを行ってください。どうしても止まらない「ぬめり手」に苦戦しているなら、一度このロングセラー製品を試してみませんか。
【WISE CHALK】WISE CHALK Regular|指紋に入り込む超微粒子パウダー

WISE CHALK(ワイズチョーク)は、クライミング日本代表である楢崎智亜選手が監修し、自身の理想を追求して作り上げたブランドです。既存の製品では満足できなかったトップアスリートが開発に関わり、原材料から加工プロセスに至るまで全て国内で行われている徹底した品質管理が信頼の証と言えます。
最大の特徴は、驚くほどきめ細かい超微粒子パウダー。片栗粉のようにサラサラとした粉末が、指紋の微細な溝の奥深くまで入り込み、ホールドとの接地面積を物理的に増やします。この密着力の高さにより、手汗によるぬめりを強力に抑え込み、限界グレードの課題でも指先が残る感覚を得られるでしょう。
「Regular」タイプは、添加物を抑えた高純度な炭酸マグネシウムを使用しており、どのような環境でも安定した性能を発揮するため、ブレンド用のベースとしても優秀です。手汗が多いクライマーはもちろん、勝負所で確実にホールドを捉えたい時の「本気粉」として、ぜひ試してみてください。
下地やジムのルールに対応するリキッドとペーストおすすめ7選
粉末チョークは強力な吸湿力を誇りますが、空調設備への配慮から使用を禁止しているジムも近年では少なくありません。また、さらなる高みを目指すクライマーの間では、液体チョークをベースレイヤー(下地)として塗り、その上から粉末を重ねる「ダブルチョーク」の手法がスタンダードになりつつあります。
このセクションでは、以下の特徴を持つ製品を中心に紹介します。
粉末禁止のジムでも使用可能なクリーンな液体タイプ
上から重ねる粉末の定着を助ける下地兼用モデル
指先の水分量を適切にコントロールするペースト状
単体での使用はもちろん、手持ちの粉末と組み合わせることでグリップ性能を底上げできる優秀なギアを見ていきましょう。
【GRASP】リキッドチョーク ハイグリップ ユーティリティー|粉の定着を高める下地兼用

GRASP(グラスプ)のリキッドチョーク ハイグリップ ユーティリティーは、その名の通りあらゆる場面で活躍する万能選手ですが、特に「粉チョークの下地」として卓越した性能を持っています。この製品を最初に手に塗り込むことで、指先のコンディションが整い、後からつけるパウダーチョークの定着力が劇的に向上するからです。
通常のリキッドチョークは乾燥後に表面がサラサラになりすぎて粉を弾いてしまう場合がありますが、本製品は適度な粘り気を残しつつ強力な摩擦を生み出す絶妙なバランスに調整されています。世界的クライマーである小山田大氏が開発に協力したこの国産ブランドは、日本の湿気を含んだ気候でもチョーク本来の性能を最大限に引き出せるよう設計されました。単体で使用しても十分なグリップ力を発揮するため、粉の使用が禁止されているジムでのトレーニングにも重宝するでしょう。
本気で登りたい課題がある時は、まずこのリキッドを薄く伸ばして乾かし、その上からお気に入りの粉末チョークを重ねる「ダブルチョーク」を試してください。指とホールドが吸い付くような一体感が生まれ、スローパー(丸みのある持ちにくいホールド)でも滑りを恐れずに力を込められます。
【FrictionLabs】Secret Stuff|魔法の粉を使用したクリーム状リキッド

FrictionLabs(フリクションラボ)は、科学的なアプローチで最高品質のチョークを開発するアメリカ・コロラド州発の専門ブランドです。同社のSecret Stuff(シークレットスタッフ)は、世界中のクライマーから「魔法の粉」と絶賛される高純度炭酸マグネシウムを、扱いやすいクリーム状に加工したリキッド製品です。
最大の特徴は、一般的な液体チョークのように水っぽくなく、ハンドクリームのような濃厚な質感を持っている点でしょう。指先に取って塗り広げると、水分が指紋の奥深くまで浸透し、アルコールが揮発した瞬間に強力な摩擦力を生む真っ白な層が出来上がります。液垂れしにくいため、ジムのマットやウェアを汚すリスクも低減できるのが魅力と言えます。
単体での使用はもちろんですが、粉末チョークを乗せる前の下地(ベースレイヤー)として活用するのがプロのおすすめです。乾燥した肌にこのクリームを塗り込み、その上から粉を叩くことで、手汗によるヌメリを長時間ブロックできる強固なグリップ環境が整います。
価格は他社製品と比べて高めに設定されていますが、少量で驚くほど伸びるため、実質的なコストパフォーマンスは決して悪くありません。乾燥肌で粉の付きが悪い方や、勝負課題で絶対に滑りたくない場面での秘密兵器として、チョークバッグに忍ばせておいてください。
【MAMMUT】Liquid Chalk|多くのジムで採用される高い信頼性

マムート(MAMMUT)のリキッドチョークは、多くのクライミングジムでレンタル品として採用されている、非常に信頼性の高い製品です。1862年に設立されたスイスの老舗アウトドアブランドが手掛けており、その品質は世界中のクライマーから支持されています。
なぜこれほど選ばれているかといえば、速乾性と持続力のバランスが秀逸だからでしょう。手に取ると乳液のような質感ですが、塗り広げるとわずか数秒でアルコールが揮発し、指全体を均一なマグネシウムの層でコーティングします。
粉が周囲に飛散しにくいため、混雑したジムやウェアを汚したくない場面でも気兼ねなく使用可能です。また、乾いた後のサラッとした質感は、粉末チョークを重ね付けする際の「下地(ベースレイヤー)」としても優秀な働きをします。
これからマイチョークデビューをする方にとって、最初の一本として間違いのない選択肢と言えます。まずはこのスタンダードな使い心地を体感してみてください。
【ADD FRICTION】GRIP ON|水分量を調整するペースト状チョーク
ADD FRICTIONの「GRIP ON(グリップオン)」は、手汗ではなく「過度な乾燥」による滑りに悩むクライマーのために開発された、新発想のペースト状チョークです。
多くの液体チョークが強力なアルコールで水分を飛ばして乾燥させるのに対し、この製品は指先の水分量を適切に保持・コントロールし、ホールドを弾かない「しっとりとしたグリップ感」を生み出します。
使用感はハンドクリームのように滑らかで、米粒大を指に伸ばすだけで十分な効果を実感できるでしょう。GRIP ONを下地(ベースレイヤー)として薄く塗り、その上から粉末チョークを乗せることで、乾燥して粉が付きにくい指にもパウダーが強固に定着します。
冬場のカサカサした指や、指皮が硬くなってホールドを弾いてしまう感覚があるなら、この水分調整というアプローチを取り入れてみてください。従来の「乾かす」だけのチョークとは一線を画す、吸い付くような感覚が得られるはずです。
【Petzl】パワーリキッド|クリーミーな層を作る下地に最適な一品
登山やクライミングギアの世界最大手ブランドであるPetzl(ペツル)が開発したこの製品は、信頼性の高い液体チョークを探している方に最適です。多くのリキッドタイプの中でも特にクリーミーな質感が特徴で、手に取ると乳液のように滑らかに広がり、指紋の隅々まで隙間なくコーティングします。
なぜこの製品が「下地」として高く評価されているのかというと、乾燥後に形成されるチョークの層が厚く、かつ均一だからに他なりません。アルコールが揮発した後に残る炭酸マグネシウム(吸湿材)がしっかりと指に定着するため、その上から粉末チョークを叩いた際の「粉持ち」が格段に向上するでしょう。
実際に使用してみると、塗布してから数秒で乾き、手が真っ白になるまでのスピードに驚くはずです。ジムの規定で粉末が使えない場合は単体でも十分なグリップ力を発揮しますし、本気トライの際は粉チョークのベースとして使うことで、より強力なフリクション(摩擦)を得られます。
ギア選びで失敗したくないなら、長年多くのクライマーの安全を支えてきたこのブランドを選んでみてください。初心者から上級者まで、あらゆるレベルのクライミングを指先から支えてくれる確かな一本と言えます。
【BoulderX】BoulderX|ロジンの有無が選べる国産リキッド
BoulderX(ボルダーエックス)は、自分好みのグリップ感や使用環境に合わせて成分を細かく選べる、こだわりの国産リキッドチョークです。多くのメーカーが一種類の配合しか用意していない中で、ロジン(松ヤニ)の配合有無やアルコール濃度が異なる複数のラインナップを展開している点が大きな特徴と言えます。
ユーザーの肌質や通っているジムのルールは千差万別のため、状況に応じた使い分けが欠かせません。例えば、強力なグリップ力を求めるならロジン入りの「黒帯(KUROOBI)」が適していますが、松ヤニの使用が禁止されているジムでは、ロジンフリーのモデルを選ぶことでマナーを守りつつ高い性能を享受できます。
微細な粒子が指紋の奥まで入り込む設計になっており、粉チョークの下地として使用した場合も非常に優秀な定着力を発揮するでしょう。自分の手汗レベルや目的に合致した「最適解」を探しているなら、ぜひこのブランドの豊富な選択肢からベストな一本を見つけてみてください。
【BEAL】ピュアグリップ|岩を汚さないロジンフリーの自然派
自然の岩場へ出かける機会がある方や、環境への配慮を重視するクライマーには、BEALのピュアグリップが有力な選択肢となります。
最大の特徴は、グリップ力を補助する成分であるロジン(松ヤニ)をあえて配合していないことです。
ロジンフリーであるため、使用後に岩やホールドへ頑固な跡が残りにくく、ブラッシング等で簡単に汚れを落とせます。
松ヤニ特有の強力なベタつきがない分、手離れが良く、さらりとした素手に近い感覚を維持できるでしょう。
過度な粘着力よりもドライな感触を好む方や、粉チョークの下地として薄く塗り込みたい場面でも重宝する一本と言えます。
コスパや個性で選ぶサステナブルなチョークおすすめ3選

機能性を追求したリキッドタイプの次は、少し違った視点でチョークを選んでみるのも面白いでしょう。単純な滑り止め性能だけでなく、香りによるメンタルケアや環境への配慮、そして長く使い続けるためのコストパフォーマンスも重要な判断基準になります。
ここでは、機能プラスアルファの魅力を持つ個性的なアイテムを厳選しました。
メンタルに作用する香り付きモデル
廃棄素材を活用した環境配慮型
素材の安全性と価格を両立した高コスパ品
自分の価値観にフィットする一品を見つければ、日々のクライミングにおけるモチベーションはさらに高まるはずです。
【東京粉末】EFFECT PACK|アロマ配合で集中力を高める
滑り止めという従来の枠を超え、香りによる心理的効果を取り入れた画期的なパウダーチョークです。
東京粉末の高い製粉技術で作られた純度の高い炭酸マグネシウムに、ゼラニウムやベルガモットといった天然精油(エッセンシャルオイル)が配合されています。
緊張感の高まるトライ直前に使用すれば、華やかな香りが脳に働きかけ、深いリラックス状態を作り出してくれるでしょう。
クライミングは「メンタルスポーツ」とも呼ばれ、過度なプレッシャーは手汗の原因となり、パフォーマンスを著しく低下させかねません。
EFFECT PACKは、指先のフリクション(摩擦力)を物理的に確保するだけでなく、精神面からコンディションを整える重要な役割を担う存在。
実際に愛用するユーザーからは、「香りを嗅ぐことで登るモードに切り替わる」「焦りが消えて集中できる」といった肯定的な評価が目立ちます。
ベースとなる粉末は粒子が非常に細かく、サラサラとした質感で指紋の細部まで隙間なく付着します。
確かなグリップ性能に加えて、心地よい香りで自身の集中力を最大化したいクライマーは、ぜひ一度試してみてください。
機能性と癒しを兼ね備えており、女性クライマーへのプレゼントとしても有力な選択肢となるはずです。
【SETOUCHI MAGNESIO】スタンダード|カキ殻独特のキシキシ感を持つ国産品
瀬戸内海で廃棄されるカキ殻を洗浄・粉砕し、クライミング用にアップサイクルした環境配慮型の国産チョークです。
最大の特徴は、一般的な炭酸マグネシウムに加えてカキ殻由来の「炭酸カルシウム」を独自配合している点にあると言えます。自然由来の成分が混ざり合うことで、化学製品だけでは出せない独特の摩擦感を実現しました。
実際に指へ馴染ませると、ふわっとした感触の中に粒子が噛み合うような「キシキシ」とした強い引っかかりを感じるため、乾燥して滑りやすいホールド(突起物)でも指皮をしっかりと食い止めてくれます。
環境負荷を減らしつつ、既存の製品とは異なるグリップ感を試したい場合に、ぜひ選んでみてください。
【UP ATHLETE】チョーク|食品添加物グレードで肌に優しい高コスパ品
スポーツサプリメントの開発で培ったノウハウを活かし、徹底的に「品質」と「安全性」にこだわった粉末チョークです。最大の特徴は、原材料に食品添加物公定書(JSFA)の規格をクリアした高純度な炭酸マグネシウムを使用している点でしょう。
一般的な工業用グレードのチョークに含まれる微量な不純物は、長期的な使用において手荒れの原因となることがありますが、本製品はそのリスクを極限まで排除しています。肌が敏感な方や、トレーニング頻度が高く長時間チョークに触れているクライマーにとって、指先の健康を守るための心強い選択肢となるはずです。
高品質でありながら、流通コストの削減などで驚くほどの低価格を実現しており、コストパフォーマンスも抜群と言えます。毎日の練習で残量を気にせず惜しみなく使えるため、手肌と財布の両方を守ってくれる質実剛健な製品ではないでしょうか。
上級者向けダブルチョークと効果的なテクニック
最適なチョークを手に入れたら、次はそれを最大限に活かすための使用法を学びましょう。
トップクライマーが実践しているテクニックを取り入れれば、同じ製品でもグリップ力は劇的に変わります。
本章では以下のポイントについて解説します。
液体と粉末を組み合わせる手法
オリジナルの配合を作るブレンド術
効果的な付け方の手順
道具の性能を100%引き出し、自身の限界グレードを押し上げてください。
液体と粉末を重ねるダブルチョークのメリット

ここぞという本気トライやコンペティションの場面では、液体タイプを下地に塗り、その上から粉末タイプを叩く「ダブルチョーク(重ね塗り)」が最も強力なグリップ力を生み出します。
それぞれが得意とする役割を組み合わせることで、単体使用では得られない相乗効果を発揮するからです。
まず、ベースレイヤーとなるリキッドチョーク(液体)に含まれるアルコール成分が、指先の皮脂や水分を一気に揮発させ、毛穴の奥まで成分を定着させて手汗をブロックします。
土台が完成した状態でパウダーチョーク(粉末)を乗せると、表面の微細な凹凸が埋まり、ホールド(突起物)に対する摩擦力が最大化される仕組みです。
実際に多くのプロクライマーが実践しているテクニックですが、重要なポイントは「乾燥のタイミング」にあります。
液体を塗った直後、まだ湿っている状態で粉をつけると、水分と混ざってダマ(粘土状の塊)になり、逆に滑る原因になりかねません。
必ず手が真っ白に乾ききるまで数秒待ち、サラサラの状態を確認してから粉をチョークアップしてください。
限界グレードの更新や、どうしても止まらないスローパー課題に挑む際は、このハイブリッドな手法が突破口になるはずです。
自分好みの質感を追求するブレンド方法

市販のチョークを単体で使うだけでなく、特徴の異なる製品を混ぜ合わせて自分だけのオリジナルブレンドを作る手法は、多くのトップクライマーが実践しています。その日の湿度や岩質、自身の指皮の状態は刻一刻と変化するため、既製品一つでは対応しきれない微妙な感覚のズレを調整する必要があるからです。
具体的には、粒子の細かいサラサラとしたベース系チョークに対し、粘り気の強い高フリクション系を少量加える方法が一般的と言えます。例えば、湿気吸着に優れた東京粉末PUREを7割、粘度が高いBLACKを3割ほどの比率でボトルに入れ、よく振って混ぜ合わせてみてください。乾燥して滑りやすい冬場なら粘り気を増やし、手汗が気になる夏場はサラサラ成分を多めにするといった具合に、環境に応じた微調整が可能になります。
また、粉末の中にゴロゴロとした塊(チャンク)をあえて混ぜ込み、登る直前に指で押し潰して定着力を高めるのも効果的でしょう。まるで科学実験のように試行錯誤を繰り返し、自分にとっての「最高に止まる配合」を探求することも、道具への愛着を深める楽しみ方ではないでしょうか。
指紋に擦り込む正しいチョークアップの手順
チョークの性能を最大限に引き出すためには、ただ粉を付けるだけでなく、指紋の細部まで粒子を行き渡らせる繊細な作業が欠かせません。
初心者は手が真っ白になるほど大量の粉をつけがちですが、実は「付けすぎ」こそが予期せぬスリップの原因になりかねません。
余分な粉が指とホールドの間で粒子の層を作り、ボールベアリングのように滑りを誘発してしまうからです。
理想的な状態を作るには、まずチョークバッグの中で粉を掴み、指の腹同士を強く擦り合わせるようにして揉み込んでください。
こうすることで、微細な粒子が指紋の溝の奥深くまで入り込み、内側から汗を吸い上げる準備が整います。
その後、バッグの外で手を叩き、表面に乗っているだけの不要な粉をすべて払い落としましょう。
手のひらが薄く均一に白くなり、息を吹きかけても粉が舞わない状態が、最も高い摩擦力を発揮するベストコンディションと言えます。
トップクライマーが登る直前に手を叩いたり、息を吹きかけたりするのは、この「適量」に調整するための儀式に他なりません。
高価なチョークでも滑ると感じる場合は、量を変える前に、この「擦り込み」と「払い落とし」の工程を見直してみてください。
指紋の一つひとつがホールドに食いつくような、鋭いグリップ感覚を得られるはずです。
ボルダリングチョークに関するよくある質問と注意点

効果的なテクニックでパフォーマンスを高める方法を理解したら、次は長く安全にクライミングを楽しむための知識を押さえておきましょう。チョークは肌に直接触れるものであり、誤った使い方や知識不足は、手肌のトラブルや周囲への迷惑につながる可能性があります。
ここでは、初心者が疑問に持ちやすいポイントや、事前に知っておくべき注意点を解説します。
手荒れを引き起こす成分とその対策
コストを抑えるための代用品に関する是非
製品タイプごとの使用期限の目安
予期せぬトラブルやジムでのマナー
※本記事の内容は、筆者が入念なリサーチに基づいて執筆していますが、医療専門家による監修を受けたものではありません。皮膚の異常やアレルギー反応が見られた場合は、自己判断せず、速やかに皮膚科医などの専門家に相談することを強く推奨します。
手荒れの原因となる成分とケア方法

クライミング後に指先がひび割れたり、皮が剥けたりする主なトラブルは、液体チョークに含まれる「アルコール」と、滑り止め成分の「ロジン」による影響だと考えられます。
多くの液体チョークは速乾性を高めるために高濃度のエタノールを配合していますが、これらは手汗だけでなく肌に必要な皮脂まで奪う性質があるからです。
皮脂膜が失われると皮膚のバリア機能が低下し、外部刺激に弱くなるため、乾燥や手荒れが進行しやすくなります。
また、強力なグリップを生むロジンは、松ヤニを原料とする天然樹脂のことですが、体質によっては接触性皮膚炎などのアレルギー反応を引き起こすリスクも否定できません。
使用後に赤みや痒みが出る場合は、成分表示を確認し「ロジンフリー」や「ノンアルコール」と記載された製品へ切り替えるのが賢明です。
手荒れを防ぐための基本ケアとして、登り終わった直後に必ず石鹸で手を洗い、指紋に入り込んだチョーク成分を完全に落とす習慣をつけてください。
その上で、失われた油分を補うために、尿素やセラミドなどが配合された保湿クリームを丁寧に塗り込みましょう。
指皮のコンディションが良いことは、ホールドを長く保持するためにも不可欠な条件と言えるでしょう。
登った後のケアまでを含めてトレーニングの一部と捉え、自身の肌質に合ったこまめなメンテナンスを心がけてください。
※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、医学的な助言ではありません。肌に異常を感じた場合は直ちに使用を中止し、皮膚科専門医へ相談することを強く推奨します。
体操用ブロックで代用する場合の注意点

体操用ブロックチョークを代用品として検討する際は、圧倒的なコストパフォーマンスと引き換えに、使用感や手間に明確な違いがある点を理解しておきましょう。
その最大の魅力は価格の安さであり、練習量が多く頻繁にチョークを消費するクライマーにとっては、非常に経済的な選択肢と言えます。
成分自体はクライミング専用品と同じ「炭酸マグネシウム」が主原料であるため、基本的な手汗の除去剤としての機能に問題はありません。
しかし、クライミング専用に開発された製品と比較すると、粒子が粗く、グリップ性能をブーストさせる機能性成分が含まれていないケースが大半です。
専用品には吸湿速度を高める乾燥剤や摩擦力を強化するロジンなどが配合され、過酷な状況でも性能を発揮する工夫が凝らされています。
これに対し体操用ブロックは純粋なマグネシウムの塊であることが多く、手汗が激しい場面やぬめりの強いホールドでは、吸水が追いつかずに滑りを感じる場面も出てくるでしょう。
また、大きな固形ブロックを自分で使いやすいサイズに砕き、さらにパウダー状にする手間が発生することも考慮しなくてはなりません。
まずは普段のトレーニング用として「質より量」で導入し、ここぞという本気トライには高性能な専用品を使うなど、用途に合わせて賢く使い分けることを推奨します。
安さだけで選んで後悔することのないよう、ご自身の登る頻度や求める性能と照らし合わせて判断するのが得策です。
粉末タイプと液体タイプの使用期限

多くのクライミングチョークには食品のような明確な消費期限は記載されていませんが、開封した瞬間から徐々に劣化は始まります。
最高のフリクション性能を維持するためには、製品タイプごとに適切な交換時期を見極めなければなりません。
液体チョークと粉末チョークでは劣化のスピードとサインが大きく異なるため、それぞれの特徴を正しく理解しておきましょう。
液体チョークの寿命は比較的短く、開封後およそ半年から1年を目安に使い切ることが推奨されます。
主成分であるアルコールが時間の経過とともに揮発し、容器の中で内容液が固まったり、成分が分離して元に戻らなくなったりしてしまうからです。
もしボトルを強く振っても混ざらない場合や、中身が粘土のように硬化して出てこない場合は、本来の性能を発揮できないため新しいものへ交換してください。
使用後はキャップをきつく閉め、直射日光の当たらない冷暗所で保管することが長持ちさせる秘訣と言えます。
一方、粉末チョークは無機物の炭酸マグネシウムが主成分であるため、理論上は腐敗しません。
しかし、日本の高温多湿な環境下で長期間放置すると、空気中の水分を吸ってしまい、肝心の吸湿性能が著しく低下してしまいます。
袋の中で大きなダマができたり、触った感触が湿っぽく感じたりした場合は、新品と比較してグリップ力が落ちている可能性が高いでしょう。
密閉できるジップ付きの袋やケースに入れ、空気を抜いて保存すれば数年は持ちますが、コンペや外岩などの重要な場面では開封したてのフレッシュなチョークを使うのが確実です。
グミ化現象の回避とジムでのマナー

液体チョークを使用する際、最も注意すべきトラブルが「グミ化現象」です。
これは、塗布した液剤が乾ききる前に手汗と混ざり合い、粘土のような塊になってしまう状態を指します。
一度この状態になると摩擦力は著しく低下し、ホールドを掴むどころかヌルヌルと滑って落ちてしまうでしょう。
原因の多くは「厚塗り」と「乾燥不足」にあるため、少量を薄く伸ばし、白くなるまで完全に乾かすのが鉄則です。
頻繁にグミ化する場合は、ロジン(松ヤニ)が含まれていない製品への切り替えを検討してください。
ロジンは強力なグリップを生む反面、水分と反応して過度な粘り気を生じさせる性質があります。
手汗の量に対して成分が合っていない可能性が高いため、サラサラとしたアルコールベースのタイプなどを試すと良い結果が得られるはずです。
適切な量と種類を見極めることが、不快なぬめりを防ぐ第一歩となります。
ジムを利用する際は、自分だけでなく周囲への配慮も欠かせません。
チョークは微細な粉末であるため、空気中を舞って他の利用者の衣服を汚したり、吸い込まれたりするリスクがあります。
粉チョークを使用する場合は必ず目の細かい生地でできた「チョークボール」に入れ、袋から直接手に出すような行為は控えてください。
マットに粉をこぼした際は、すぐにブラシや雑巾で拭き取るのが最低限のマナーと言えます。
登り終わった後の「ブラッシング」も、忘れてはいけない大切な習慣です。
ホールドに付着した過剰な粉は、次に登る人にとって滑りやすい障害物となり、湿気を吸って固まると簡単には取れません。
自分のトライが終わったら、感謝を込めてホールドを磨き、来た時よりも綺麗な状態に戻しましょう。
クリーンな環境を保つことは、すべてのクライマーが気持ちよく登るための共通ルールなのです。
まとめ|最適なチョークで4級課題の完登を目指そう

自分にぴったりのチョークは見つかりましたでしょうか。
たかが粉、されど粉ですが、指先とホールドをつなぐ唯一の接点であるチョークを変えるだけで、登りの感覚は劇的に変化します。
特に4級の壁に阻まれているなら、自身の保持力不足を疑う前に、まずは手元のコンディションを見直すべきです。
重要なのは、自分の肌質と課題に合った製品を選ぶことと言えます。
手汗によるぬめりで落ちるなら、吸湿性に優れた粉末タイプや、卵殻・アップサライト配合のモデルが強力な味方になるはずです。
逆に乾燥肌で弾かれる感覚があるなら、水分を補うペースト状の下地を取り入れるのが正解でしょう。
どれを選ぶか迷っている場合は、記事前半で紹介した「総合ランキングTOP5」の中から試してみてください。
多くのクライマーに支持される定番品は、癖が少なく扱いやすいため、最初のマイチョークとして失敗がありません。
液体と粉末を組み合わせるダブルチョークなど、使い込むうちに自分だけの「止まる配合」が見つかるはずです。
新しいチョークバッグを腰に提げ、万全のフリクションで壁に向かう高揚感は、マイチョークを持つ者だけの特権と言えます。
次回のジムでは、ぜひ新しい相棒と共に、これまで止まらなかったあの一手に挑戦してください。
指先に吸い付くような感覚を得た瞬間、完登への扉はすでに開かれています。