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2025年12月、冬のボルダーシーズン本番を迎える関東周辺のエリアで、御岳「嶺の夕」など複数の人気課題において岩の欠損や剥離が相次いでいることが分かった。日本フリークライミング協会(JFA)の発表によると、この1年で御岳や山梨・兜岩などで物理的な形状変化が確認されており、トライ前の安全確認が重要となっている。また、エリア存続に直結する裏御岳の駐車問題や笠間の一部登攀禁止区域についても、改めて厳格なルール遵守が求められている。

【総括2025】関東周辺ボルダー「岩の変化」と「冬のアクセス」全確認

2025年も残すところあとわずかとなり、関東周辺のボルダリングエリアにおける一年間の動向を総括すべき時期が訪れた。今年、クライミングシーンを取り巻く環境において特筆すべきは、自然の岩場というフィールドがいかに流動的であり、かつ地域社会との繊細な均衡の上に成り立っているかを再認識させられる事象が多発した点である。本稿では、2025年に発生した主要な岩の物理的変化と、現在進行形で留意すべき冬のアクセス情報を体系的に整理し、次なるシーズンへ向けた基礎知識として提供する。

まず物理的な側面、すなわち「岩の変化」については、長年親しまれてきた著名なエリアにおいて、ホールドの欠損や剥離が相次いで報告された一年であった。これらは単なる自然の風化作用にとどまらず、人気課題へのトライ集中による負荷が影響したケースも散見される。関東近郊のアクセスしやすい岩場においても、安定していると思われていたスタンスやホールドが突如として崩落する事例が確認されており、既存課題のグレーディング(難易度定数)や安全性に対する認識のアップデートが不可欠となっている。岩は永遠に変わらないものではなく、常に変化し続ける有機的な存在であることを、我々は改めて胸に刻む必要があるだろう。

一方、社会的な側面である「アクセス問題」についても、依然として予断を許さない状況が続いている。観光地としての側面を持つエリアでは、イベント開催に伴う季節的な利用規制が厳格に運用されており、事前の情報収集なしには入山すらままならないケースもある。また、駐車スペースの利用やナイトボルダリング、チョーク跡の処理などを巡り、地域住民や管理者からの視線は年々厳しさを増しているのが実情だ。一部エリアでの継続的な登攀禁止措置は、クライマー一人ひとりの行動がエリア全体の存続に直結するという事実を、重く突きつけている。

御岳エリアを中心に人気課題での物理的欠損が相次ぐ

関東近郊のクライマーにとって、「聖地」とも呼べる御岳エリアにおいて、2024年の終わりから2025年にかけて、象徴的な人気課題での物理的な欠損事故が相次いで報告されたことは記憶に新しい。長年にわたり無数のクライマーを受け入れ、不動の存在と思われていた巨岩たちもまた、風化と負荷の蓄積という自然の摂理からは逃れられないことを如実に示す一連の出来事であった。

まず大きな衝撃を与えたのは、2024年11月28日に報告された、玉堂美術館エリアにおける「嶺の夕(みねのゆう)」(初段)の変貌である。御岳を代表するこの課題において、中部にあるフットホールドが突如として欠損した。日本フリークライミング協会(JFA)の現地確認によると、欠損箇所は穴状の形状へと変化しており、以前よりも足がかりとして利用しやすくなったとの見解も示されている。多くのクライマーが目標としてきたベンチマーク的な課題だけに、岩の形状変化という事実は瞬く間にコミュニティへと拡散した。

その衝撃が冷めやらぬ翌2025年の3月5日には、さらに深刻な剥離事故が発生している。場所は多摩川の下流側、発電所の対岸付近に位置する日陰岩エリアの人気課題「嶺上開花(リンシャンカイホウ)」だ。報告によれば、クライマーが実際にトライを行っている最中に、スタート部左上に位置していたフットホールドが、周辺の岩を巻き込む形で剥離し落下したという。トライ中の剥離は、登攀者自身のみならず、周囲のスポット担当者をも巻き込む重大事故につながりかねない危険性を孕んでいる。

御岳エリアの簡易マップを脳裏に描いていただきたい。上流に位置する玉堂美術館エリアと、そこから流れを下った先にある日陰岩エリア。この地理的に離れた二つの主要エリアで、短期間のうちに立て続けに「岩の破壊」が発生した事実は重い。これは特定の岩だけの問題ではなく、エリア全体で経年による岩質の変化や、人気課題への集中による負荷が限界に達しつつある可能性を示唆している。我々は、慣れ親しんだ岩場であっても、ホールドは常に欠ける可能性があるという前提で岩に対峙しなければならない。

これら一連の欠損が、各課題のグレードやムーブの質に具体的にどのような変容をもたらしたのか、そして我々クライマーはいかに対応すべきか。技術的な詳細と各課題の現在の状況については、次項で詳しく検証していく。

御岳「嶺の夕」中部フットホールドが欠損し穴形状へ変化

御岳ボルダーの歴史を語る上で欠かせない玉堂美術館エリア。その中でも、テクニカルなトラバース課題として多くのクライマーに試登されてきた初段「嶺の夕(みねのゆう)」において、物理的な形状変化が確認されたのは2024年11月28日のことである。日本フリークライミング協会(JFA)の公式レポートおよび現場からの報告によれば、課題中部に位置する重要なフットホールドの一部が欠損したことが明らかになっている。この事象は、長年親しまれてきた課題の性質そのものを変容させる出来事として、多くの愛好家の注目を集めた。

具体的な欠損箇所は、課題の中盤、次のムーブへ移行するために繊細な足運びが要求されるセクションにあるフットホールドだ。従来、このスタンスはクライマーに対し、極めて正確な足置きと絶妙なボディバランスを強いるポイントとして機能していた。しかし、今回の欠損により岩の一部が剥離し、その痕跡は明瞭な「穴形状」へと変化を遂げた。自然の岩場におけるホールドの欠損は、スタンスの消失によって課題の難易度を跳ね上げたり、場合によっては登攀不能にさせたりするケースが散見されるが、今回はそれらとは異なる特異な結果をもたらしている。

現場からの詳細な報告によると、この穴形状への変化は、スタンスとしての保持力を向上させる方向に作用したという。新たに形成された凹みは、クライミングシューズの先端を収めるためのフックとして機能しやすく、欠損前の状態と比較して「踏みやすくなった」との指摘が相次いでいる。これは、課題全体の難易度体系にも影響を及ぼすファクターとなり得る。厳格なグレーディングで知られる課題において、中盤の安定性が増すことは、核心部へアプローチする際の身体的負荷や心理的プレッシャーを軽減させることに直結するためだ。

既存の課題が易化傾向へ変化したことについて、戸惑う声が上がることも予想されるが、こうした変化もまた自然の岩場における「現在」の姿であることに変わりはない。岩の形状変化は不可逆であり、クライマーは眼前の岩の状態をありのままに受け入れ、対峙していく必要がある。長きにわたり研鑽の場となってきた名課題であっても、永遠に不変ではないという事実を、今回の欠損事例は静かに、しかし確実に物語っている。我々は、トポに記されたグレードやムーブの記述が過去のものである可能性を常に考慮し、変化した岩の形状を冷静に観察した上でトライに臨む姿勢が求められている。

御岳「嶺上開花」スタート部で周辺の岩ごと剥離・落下が発生

岩の形状変化がもたらす結果は、グレードやムーブへの影響だけに留まらない。より直接的かつ深刻なリスクとして、クライマーの身体的安全を脅かす「物理的な崩壊」もまた、2025年の御岳エリアでは確認されている。今年3月5日、多くのクライマーで賑わう日陰岩エリアにおいて、人気課題「嶺上開花(リンシャンカイホウ)」のトライ中に発生した大規模な剥離事故は、その潜在的な危険性を改めて浮き彫りにした事例である。

日本フリークライミング協会(JFA)の報告によると、この事故はクライマーが課題に取り付いている最中、まさにムーブを起こそうとした瞬間に発生した。具体的には、「嶺上開花」スタート部の左上に位置する重要なフットホールドに荷重がかかった際、そのホールド単体だけでなく、周辺の岩塊ごと剥離し、落下したのである。表面的な突起の欠損や摩耗とは異なり、母岩の一部が構造的に破断したと見られるこの現象は、クライマー自身の足元への落石や、バランスを崩しての予期せぬ落下を誘発する極めて危険な状況であった。

御岳ボルダーを構成するチャート(角岩)は、一般的に硬度が高く堅牢な岩質として知られている。しかし、自然の岩には不可視の節理やクラックが存在し、長年にわたる多数のクライマーによる利用負荷、あるいは冬季における凍結融解の繰り返しにより、局所的な脆弱性が進行している箇所も少なくない。特に今回の事例のように、スタート付近という強い負荷が繰り返し掛かるセクションでは、岩の疲労が限界に達し、突発的な崩壊に至るリスクを常に考慮する必要がある。

この剥離によって、当該課題のスタート形状は物理的に変容を余儀なくされた。これから「嶺上開花」に挑むクライマーは、以前のムーブが通用しない可能性に加え、剥離跡の鋭利な断面や、その周辺に残るかもしれない不安定な岩肌に対して十分な警戒が必要となる。岩は静止した物体ではなく、経年とともに変化し、時に牙を剥く存在である。我々は外岩というフィールドが管理された人工壁とは異なり、崩壊のリスクを常に内包する自然物であることを、この事故を通じて再認識しなければならない。

山梨・兜岩「ふりかけ岩わさび」や下仁田「オガンヌ」でもホールド崩落

岩の崩壊現象は、決して御岳エリアだけの局地的な問題ではない。2025年に入り、関東近郊の主要なクライミングエリアである群馬や山梨においても、クライマーに親しまれてきた課題で相次いで岩の欠損が報告されており、自然のフィールドにおける経年変化の影響が広範囲に及んでいることが浮き彫りとなっている。

群馬県の下仁田ボルダーでは、4月10日に人気課題の一つである「オガンヌ」において、スタート時に右手を掛けるホールドがトライ中に欠損する事象が発生した。スタート部分は多くのクライマーが繰り返し強い負荷をかける箇所であり、疲労破壊が起きやすいポイントの一つである。幸いにして、JFA(日本フリークライミング協会)への報告によれば、この欠損による課題のグレード感への影響はないとされているが、安定しているように見えるホールドであっても、ある日突然砕ける可能性があることを改めて認識させる事例となった。一方、山梨県の兜岩においては、より深刻かつ大規模な岩の崩落が確認されている。まず1月7日、甲府城エリアのルート課題「三階こいのぼり」において、核心部となる3本目のボルト付近のカチホールドが欠損した。指先に全体重を預けるような微細なホールドの破損は、予期せぬ突発的なフォールを招きやすく、クライマーにとって精神的な動揺も大きい。

さらに衝撃を与えたのは、同じく兜岩で3月13日に発生したボルダー課題「ふりかけ岩わさび」(4級)での崩落事故である。この事例では、終了点手前のリップ付近に位置していた直径約40センチメートルにも及ぶ巨大なガバホールドが、岩塊ごとごっそりと脱落した。40センチメートル級の岩塊が高所から落下することは、直下のスポッターや周辺の登山者に対して致命的な被害を与えかねない極めて危険な事態である。現状、課題自体のトライは可能とされているが、主要なホールドの消失に伴い、グレード感や要求されるムーブには変化が生じている可能性が高い。これらの事例は、ホールドの大小や形状に関わらず、外岩という環境下では常に崩壊のリスクが潜んでいるという事実を、冷徹に突きつけている。

有名課題にも潜む岩の脆さとトライ前安全確認の重要性

このリスクは、決して兜岩のような特定の岩場に限られた特異な現象ではない。多くのクライマーが訪れ、岩が磨かれるほどに登り込まれている関東近郊のメジャーエリアにおいても、同様の地質学的変化が頻発している事実を見過ごしてはならない。

東京都の御岳エリアでは、2024年11月末、玉堂美術館エリアの看板課題とも言える「嶺の夕(みねのゆう)」(初段)において、中間部のフットホールドが欠損するという事態が発生した。このケースでは、欠損跡が穴状の形状となり、結果として以前よりも足が置きやすくなるという「易化」現象が報告されている。しかし、これは偶然に過ぎない。岩の構造が変化したという事実は、その周辺の強度がもはや過去の常識とは異なる状態にあることを示唆しているからだ。さらに2025年3月には、同じく御岳の日陰岩にある「嶺上開花(リンシャンカイホウ)」においても、トライ中にスタート左上のフットホールドが周辺の岩ごと剥離・落下する事故が起きている。群馬県の下仁田ボルダーでも、4月に課題「オガンヌ」のスタート右手ホールドが欠損するなど、エリアや課題の知名度を問わず、岩の崩壊は進行しているのである。

これら一連の報告から導き出される教訓は、クライミングにおける「安全神話」の崩壊である。「多くの人が登っている有名課題だから安全だ」「チョーク跡がしっかり付いているから岩は安定している」という思い込みは、時に重大な事故を招く要因となり得る。自然の岩は、経年劣化、冬季の凍結融解、そしてクライマーによる繰り返しの負荷によって、刻一刻とコンディションを変化させているのだ。

したがって、我々クライマーには、トライを開始する前の「能動的な安全確認(リスク・アセスメント)」がこれまで以上に強く求められる。課題に取り付く前のオブザベーションでは、単にムーブを構築するだけでなく、使用するホールドに「浮き」がないかを目視し、怪しい場合は軽く叩いて音を確認する慎重さが必要だ。また、万が一ホールドが欠損した際に体がどの方向へ振られるかを予測し、スポッターの配置やクラッシュパッドの位置を最適化することも不可欠である。40センチメートル級の岩塊が落下した兜岩の事例が示すように、頭上からの落下物は致命傷になりかねない。岩の変化を「自然の一部」として受け入れつつも、その変化が牙を剥く瞬間を予見し、回避する準備こそが、現代の外岩クライミングにおける必須のスキルセットと言えるだろう。

【警告】エリア存続に関わる駐車・利用禁止ルールの絶対遵守

自然崩落という物理的なリスクが「個人の安全」に関わる問題であるならば、駐車や利用ルールの違反という社会的なリスクは「クライミングエリアの存亡」そのものに関わる、より広範で深刻な問題である。岩場というフィールドは、地権者の理解と地域住民の寛容さの上に辛うじて成立している「借り物の場所」に過ぎない。しかし残念なことに、関東周辺の主要エリアにおいて、この前提を揺るがす重大なルール違反が散見されており、アクセス問題は予断を許さない状況にある。

現実に目を向ければ、裏御岳エリアにおけるゲート前路肩への違法駐車に対し、工事関係者から強い警告が発せられている事実は重く受け止めなければならない。こうした迷惑駐車は、単なるマナー違反の枠を超え、地域産業や住民の生活に対する実害を伴う「業務妨害」となり得る。また、笠間ボルダーの「大黒岩」や湯河原・幕岩の「てんとうむしロック」が登攀禁止区域として指定されている事実は、ルールやマナーの欠如がどのような結末を招くかを如実に物語っている。道路へのマットのはみ出しやチョーク跡の放置といった、クライマー側の配慮不足が蓄積した結果、交渉の余地なく「立ち入り禁止」という不可逆的な措置が取られたのである。

一度失われた信頼を回復し、閉鎖されたエリアを再び開放させることは、物理的な岩の修復以上に困難を極める。ひとりの軽率な行動が、何十年と守られてきたエリア全体を半永久的に消滅させるトリガーになり得るのだ。我々クライマーに求められているのは、もはや「楽しむ権利」の主張ではない。地域社会の一員として認められるための「義務」の遂行である。看板による警告や禁止措置は、地域からの最後通告であることを認識し、エリア存続のためにルールを絶対遵守する姿勢が不可欠だ。次項では、現在特に注意を要する具体的な規制内容について詳述する。これらを正確に把握し、行動に移すことこそが、岩場を守るための第一歩となる。

裏御岳ゲート前の路肩駐車は厳禁、寒山寺駐車場の利用徹底を

東京都青梅市に位置する裏御岳エリアにおいても、アクセスの要となる駐車マナーについて、予断を許さない状況が続いている。特に緊急の是正が求められているのが、林道ゲート前における路肩駐車の問題だ。このエリアは、静謐な環境と質の高い課題で知られるが、アプローチの利便性を優先した一部のクライマーによる不適切な駐車が、地域社会との摩擦を生じさせている。現在、工事関係者や地元住民からの苦情を受け、ゲート前およびその周辺路肩への駐車は厳禁とされている。

当該地点は、単なる空きスペースではない。林道を利用する工事車両や緊急車両が通行、あるいは転回を行うために不可欠な空間として機能している場所だ。ここにクライマーの車両が停められることで、業務車両の進入が物理的に阻害される事案が発生しており、これは明確な業務妨害に該当し得る。JFA(日本フリークライミング協会)や地域の事情に詳しいクライミングコミュニティからも繰り返し注意喚起がなされているが、依然として「短時間なら問題ない」「一台くらいなら」という安易な判断が見受けられるのが実情だ。こうした認識の甘さが、エリア全体の閉鎖という最悪のシナリオを招く要因となることは、過去の他エリアの事例を見るまでもなく明らかである。

この事態を打開し、エリアを健全に利用し続けるための唯一の解決策は、指定された正規駐車場の利用を徹底することに尽きる。具体的には、エリアから見て多摩川の下流側、楓橋の近くに位置する「寒山寺駐車場(観光駐車場)」の利用が強く推奨されている。ゲート前の路肩に比べれば岩場までのアプローチ距離は長くなるものの、トイレ等の設備も整っており、何より地域住民や工事関係者に迷惑をかけることなく、堂々と利用できる公共の駐車場である。

岩場の目の前まで車で乗り入れたいという欲求は、クライミングエリアにおいてはリスクそのものとなる。アプローチの労力を惜しむあまり、登る場所そのものを失っては本末転倒だ。裏御岳の岩場が今後も開放され続けるかどうかは、私たちクライマーがゲート前の路肩を「空白」のまま保てるかどうかにかかっている。現地を訪れる際は、必ず寒山寺駐車場等の正規スペースへ車両を停め、徒歩でのアプローチを行うよう、重ねて強く要請する。

笠間「大黒岩」および湯河原「てんとうむしロック」は完全登攀禁止継続中

駐車場の利用規律と同様に、あるいはそれ以上に深刻な問題として捉えなければならないのが、特定の岩そのものに対する「完全登攀禁止」の措置である。現在、関東周辺の主要エリアにおいて、解除の見通しが立っていない禁止区域が依然として存在しており、これらに対する周知と徹底が改めて求められている。

茨城県の笠間ボルダーにおいては、「大黒岩」の登攀禁止措置が継続中だ。この岩は道路脇に位置するというその立地ゆえに、過去、クライマーが敷いたクラッシュパッドが車道にはみ出し、通行の妨げになる事案が頻発した。加えて、景観を損なうチョーク跡の問題も重なり、地権者および管理者との協議の結果、無期限の登攀禁止という厳しい決定が下されている。現地には警告看板も設置されているが、新規の来訪者が知らずに取り付くことのないよう、コミュニティ全体での情報共有が不可欠である。

また、神奈川県の湯河原幕岩エリアにおいても、「てんとうむしロック」が登攀禁止となっている。同エリアは観光地としての性格が強く、梅林の保護や一般観光客との共存が最優先事項とされる場所だ。事実、毎年早春に開催される「梅の宴」期間中(2025年も2月から3月にかけて実施)は、入園料の支払いや指定駐車場の利用制限など、クライマーに対しても厳格なルールが課されている。こうした繊細な管理下にあるエリアにおいて、禁止指定された岩に取り付く行為は、エリア全体の利用停止に直結しかねない背信行為と言える。

「大黒岩」および「てんとうむしロック」の事例は、一時的な規制ではなく、過去のトラブルに端を発した恒久的な措置である。これらの岩が「登れない」という事実は、我々クライマーが過去に犯した過ちの記録でもあり、残された他の岩を守るための境界線でもあることを、今一度強く認識する必要がある。